オウンドメディアは「自社で保有するメディア」の総称であり、費用を支払って広告掲載を行う「ペイドメディア」、Twitter・facebook・InstagramなどのSNSを利用して一般ユーザーからフォロー&いいね!を増やす「アーンドメディア」などを組み合わせながら幅広いユーザーに対してアプローチを行うマーケティング手法です。
- 広告以外で商品購入に結びつけたい
- 資料請求数を増やしたい
といった課題解決のためにオウンドメディアの立ち上げを考えている方や、運営をしているがいまいち効果が分からない。
といった方向けに、どのような点に意識して構築から運営を行えばよいのかまとめた記事になっています。
オウンドメディアとは?
まずはオウンドメディアをよく分からない方向けに、どういったものなのかを解説します。すでにご存知の方は先へ読み進めてください。
オウンドメディアとは自社運営メディアのこと
オウンドメディアとは自社で運営するメディアのことです。
運営の目的は、主に以下の2つに大別されれます。
- Webマガジン・ブログなどの認知拡大・リード獲得を目的とする「事業課題解決」
- 採用サイトのブランディング・エントリー数の増加などを目的とする「採用課題解決」
具体的には、自社ブログの場合。
ブログで紹介した商品の認知拡大、展開サービスの資料請求や問合せの増加に繋げていくことで、企業マーケティングや営業に関連する「課題」を解決させる目的で運営を行うのが一般的です。
採用サイトであれば、自社の事業や職種/社風に興味を持つであろう求職者に訴求し、ブランディングの強化/エントリー数増加/採用後のミスマッチ低減といった採用課題の解決を目的とします。
このように「オウンドメディア」とは、企業が抱えている事業課題の解決を目的としてコンテンツ発信を継続していく手段です。
オウンドメディアと公式サイトの違い
公式サイトは「サービス・製品を紹介する」「企業の概要やビジョンを伝える」などを目的とすることが一般的ですが、オウンドメディアは情報を発信して対象となるユーザー(ターゲット層)に広く見てもらうことを目的に運営を行います。
極論をいえば、自社サービスと関係の無い情報でも掲載を行うことができる(本来の運営目的からは逸脱していないことが前提)メディアと考えることもできます。
オウンドメディアの目的と活用方法
ここまで説明した通り、オウンドメディアと公式サイトはそれぞれ異なる役割を果たしています。
オウンドメディアを運用することで出来ることを、深掘りして見ていきましょう。
オウンドメディアを運用する目的
オウンドメディアを活用する目的は企業の事業課題によってさまざまです。
具体的な例を紹介します。
新規ユーザーへの認知
一つ目の目的は「新規ユーザーへの認知」です。
現時点で自社製品・サービスを認知していない潜在顧客に対して、初回接触の機会を生み出した上で認知度を向上させることを目的としています。
どれほど素晴らしい商品・サービスを提供していても、存在を認知されなければ売上には繋がりません。潜在顧客の興味を引くような有益な情報を発信する手段として、オウンドメディアは力を発揮します。
潜在層への情報発信に焦点を当てた場合、SNSでも同様の効果を期待することができます。
しかしSNSは、更新頻度が高く常に新しい情報に注目が集まってしまう特性があるため、ストック型のオウンドメディアとは異なる部分も存在します。
オウンドメディアは、インターネット上の検索を通じて過去に制作したコンテンツにもたどり着いてもらえるメリットがあります。
自社が保有するあらゆる媒体の情報拡散の拠点として機能させることで、「メルマガ」「SNS」「動画」「広告」といった異なるチャネルのシナジーを生み出しやすくなります。
見込み顧客を育てる
オウンドメディアを活用することで見込み客の育成をすることも可能です。「見込み客の育成」はマーケティング用語で「リードナーチャリング」と呼ばれますが、展示会などで獲得した見込み客に対し、メールを活用して継続的にコミュニケーションを図り、信頼関係を構築しながら購買意欲を高めるプロセスや施策・手法が代表的な例です。
具体的にリードナーチャリングが重要な理由をまとめます。
見込み客と継続的に接点を持てる
リードナーチャリングを活用することで、見込み客と継続的に接点を持つことが可能です。初回接点から受注までが長期化しやすいBtoB取引においては、初回接点だけでは見込み客が離反しやすく、失注に繋がりやすいという特性があります。
このような特性から、初回接点では温度感が低い見込み客へ定期的なフォローを行いながら温度感を上げていき、一定レベルまで引き上がってからセールスがクロージングを行うといったリードナーチャリングが注目されています。
リピーターの顧客育成に繋がりやすい
マーケティング用語に「1:5の法則」と呼ばれるものがあります。
これは新規顧客の獲得コストが既存顧客の5倍掛かることを表現した言葉です。
この法則から、新規顧客はリピーター客と比較しても利益率は低くなります。見込み客の段階でリードナーチャリングを活用することで、少しづつ段階を踏みながら顧客との関係を構築していくことから信頼関係を高めることが可能です。
このような取り組みが、将来的にリピーター客になる方を増加させることを覚えておきましょう。
顧客の離反を防ぎやすい
顧客離反を防ぎやすいという点でリードナーチャリングは重要視されています。
「1:5の法則」とともにマーケティング用語には「5:25の法則」というものがあり、顧客離れを5%改善すれば、利益が25%改善することを表す法則です。
つまり、顧客離れを生じさせない工夫を見込み客の段階で行うことで、継続的な顧客になる可能性を高められます。
企業価値の向上
企業価値向上(ブランディング)の目的させるためにオウンドメディアを活用することも可能です。
ブランディングとは「自社の商品・サービスを消費者に認知してもらい、競合企業の商品・サービスとの違いを明確に示すこと」となります。
ブランディング目的にオウンドメディアを活用することで、多くのメリットを得られます。
具体的な例をピックアップして解説します。
独自性を出しやすい
世の中に溢れている数ある商品・サービスの中から自社のものを選んでもらうためには、他社との「差別化」が必要不可欠です。
オウンドメディアは第三者が運営するメディアと違い、情報の出し方からコンテンツの統一感などを自社でコントロールすることが可能な媒体で、企業の色を一番反映しやすい媒体でしょう。
サイトデザインからコンテンツ内容まで一貫性を保つことで、商品・サービスの特色を反映しながらも広告などとは違ったアプローチでターゲット層へ情報発信えば、これまで獲得できていなかった見込み層を獲得することに繋がります。
信頼を獲得しやすい
企業価値を向上させるためには、オウンドメディアを通じて、質が高く専門性も兼ね備えているコンテンツを発信する必要があります。
企業が発信したコンテンツに満足(価値を感じてもらう)してもらうことで、サービスを知ってもらうだけでなく「どのような企業なのかを知りたい」と、興味を持つ機会も作り出せるのです。
そのほか、専門性の高いコンテンツに合わせて『自社サービス利用者の声』『セールス担当者の顔・個性が見えるコンテンツ』などの情報発信を行うことで、ブランディング効果も高められます。
継続してサービス利用/商品購入をしてもらうためには、サービス/商品そのものの質だけではなく『会社に対する信頼感・安心感・親近感』が不可欠となります。
『商品だけではなく、会社も好きになってもらう』ようなコンテンツ発信を行っていきましょう。
広告費用の削減
オウンドメディアで継続的に発信を行いながら、コンテンツを蓄積していくことで中長期的には広告費用の削減という利益を得ることにも繋がります。
短期間での成果を得やすい『リスティング広告』は、ユーザーが検索したキーワードに合わせて自社広告を露出することができる広告手法ですが、露出は入札形式(オークション)になっており、成約に繋がりやすいキーワードほど広告単価が高騰しやすく大きな費用負担に繋がります。
一方オウンドメディアは、積み上げたコンテンツが検索結果の上位に表示されれば、広告費用を掛けずに中長期的に顧客接点を生み出し続けることが可能です。
また、SNSなどを組み合わせることでオウンドメディアとSNSのシナジー効果が生み出され、さらにパフォーマンスを上げることも可能です。
自社に合う人材の獲得
少子高齢化が進み『売り手市場』に拍車が掛かっている時代背景から、自社に合う人材獲得の難易度は格段に上がっています。
オウンドメディアを通して
『会社が社会に対して提供している価値・ビジョン』
『会社で働いている従業員の素顔』
など、これまでと違った側面で発信を行うことで求職者が『自身の価値観に合致した会社か』の判断材料を提供することができます。
また、スマートフォンが急速に普及したことで、誰でも情報へのアクセスが容易になりました。
膨大な情報の中から『必要な情報』『不要な情報』を選別する、情報リテラシーが求職者全体に備わっています。
オウンドメディアを通じて会社のビジョン・価値観を発信することで、初回接点をもった求職者からの応募率を向上させるとともに、情報をオープンにすることで採用後のミスマッチを減らすといった課題の解決に繋がるでしょう。
目的別、オウンドメディアの重要指標(KPI)具体例
オウンドメディアを立ち上げることは決まったものの『何を達成したいか』という目的を決めないまま進行すると、得られた効果の計測自体が難しくなります。
効果計測ができなければ、継続的にリソースを投下し続けること自体が難しいと判断され、プロジェクト自体が途中でストップする可能性が高くなるでしょう。
スタートから最短でゴールに向かう為には、ゴールが何かを設定することが不可欠です。ゴールはプロジェクトチームの誰もが理解した上でスタートを切るようにしましょう。
そのために必要なのが「指標(KPI)」となります。
「集客」「リードナーチャリング」「ブランディング」「採用」の代表的な4つの目的に合わせて、設定すべきKPIについて見ていきましょう。
集客/コンバージョン数
集客の状況を適切に評価する指標として挙げられるのが「CV(コンバージョン)数」です。
CV(コンバージョン)とは、マーケティング分野における最終的な成果のことを指して使われます。
商品購入や求職者からの応募などの成約数。資料ダウンロードや問い合わせ数などの増加が見られれば、順調にオウンドメディアが成長をしていると判断できます。
「コンバージョンポイント」は提供サービス/商品や、マーケティングの目的によって変化します。
BtoBビジネスを行う企業では、顧客となりうる企業の『電話番号』『メールアドレス』などを取得することがコンバージョンポイントとすることが一般的です。
コンバージョンポイントには難易度があり、『問合せ』よりも『ホワイトペーパー』の方が難易度が低くなる傾向があります。仮に『問合せ』がもっとも得たい結果の場合で、コンバージョン率が低い場合、コンバージョン数が少ないことで分析が難しくなりがちです。
その場合は、マイクロコンバージョン(本来のコンバージョンよりも難易度の低いコンバージョンポイント)を設定し、分析を行う等をすることで効果を上げることもできます。
リードナーチャリング
獲得した見込み顧客の購入意欲を高め、将来的な受注に繋げていくマーケティング手法である「リードナーチャリング」を目的とする指標として以下があります。
- セミナー申込み数
- メルマガ開封率
- クリック率
- 動画再生数
特に『セミナー申込み数』は、自社が提供しているサービス・商品に何かしらのきっかけで興味を持った上で取るアクションです。より『商品・サービスについて知りたい』と考えているユーザー層なので『セミナー申込み』が増加していれば、見込み顧客の育成結果が良い方向で出ていると判断して良いでしょう。
ブランディング
ブランディングを目的としたオウンドメディアの場合、以下が評価指標です。
- 検索数
- 指名検索の推移
- 会社案内のダウンロード数
『指名検索の推移』はGoogleサーチコンソールを利用すれば、自社サイトに流入があったキーワードの検索回数や、検索からのクリック率を確認することができます。
ブランディングの効果測定に特化すれば、社名・商品名・サービス名で検索されている数をチェックするのが有効です。
また社名と一緒にどんなキーワードで多く検索されているかを調査すれば、企業イメージがポジティブなのかネガティブなのかという傾向も見えてきます。
現在の状況を前年比・前月比と比較して検証することができる点も『検索数』であれば実数比較が可能です。
採用
採用を目的としたオウンドメディアを運用する場合の指標は、オウンドメディア経由の『エントリー数』または『採用サイトへのUU(ユニークユーザー)数』もをKPIに設定することが一般的です。
また、採用サイト(オウンドメディア)を見て応募につながった方と、そうでは無い方の採用後離職率を計測していき、オウンドメディアを見た方の離職率が低い傾向があればもう一つのKPIとして設定することでコンテンツの幅を増やす事ができます。
その結果、採用数向上&離職率低下といった2つの課題を改善することにつなげていくことも可能です。
オウンドメディアを始めるには
オウンドメディアの運営は、『他社との差別化』『自社サービスの認知向上』『広告費用削減』『採用』などのメリットが得られることを説明してきました。
ここからは、これからオウンドメディアを始める手順を3つに分けて説明します。
目的と指標決め
オウンドメディアの運営目的によって、当然『発信する情報』も変化します。
得たい目的によっては、オウンドメディア以外の方法が効率的な場合もありますので、まずは目的を明確に設定しましょう。
次に、オウンドメディアを通して成し遂げたい最終目標である『KGI』、それを計測する指標である『KPI』を設定します。
例えば自社のブランディングを目標とした場合、KGIには想起率(業種の中でどの企業が一番に思いつくか)が当てはまり、KPIには『UU(ユニークユーザー)数』『Twitter・SNSのフォロワー数』などが該当します。
運営開始後に「このKPIだとKGIが達成しないのでは?」となることもよくある失敗例で、途中でKPIの変更することもできますが、KPIが変わればコンテンツも必然と変わってきますでできるだけ慎重に指標を決めることをおすすめします。
プロジェクトチーム編成
オウンドメディアの特性上、定期的に記事を発信することで以下のようなメリットが得られます。
- 更新頻度が上がり、SEO的な恩恵を受けやすい
関連記事:コンテンツSEOで結果を出すために必要な手法と書き方を解説 - ターゲット層が自社コンテンツに触れる機会が増し、エンゲージメントが高まる
プロジェクトの予算にもよりますが、オウンドメディア運営を一人の担当者だけでこなすのは現実的ではありません。社内人材が限られている場合、社外の記事制作会社やオウンドメディア運用代行サービスなどを併用することも検討してみましょう。
全ての工程を社内でまかなうのがもっとも費用を抑えられる方法ですが、知識の無いメンバーのみでプロジェクトを進めると全くといっていいほど結果が出ないケースも少なくありません。
自社に足りない部分に外部のプロを入れることで、コストバランスと効果の両取りを目指すこともできますので、予算と人材リソース/社内のノウハウなどを天秤に掛けながら検討しましょう。
サイトの構築
オウンドメディアで達成したい目的と、効果計測のためのKPI設定。社内外のチームを整えられたら、サイトの立ち上げ作業に入ります。
オウンドメディアと一言で表現しても、ブログに近いシンプルなものから、データベースと連携した多機能なものまで多岐に渡ります。SNSでの拡散を狙いたい場合にはシェアボタンを設置するなど、目標に応じて必要な要件を洗い出しましょう。
必要な機能の洗い出しが終われば、それを配置したページの構成案(ワイヤーフレーム)を作ります。この辺りは、Web制作会社の担当業務になることがほとんどですが、依頼漏れが発生しないように事前に必要要件を洗い出しておくことが大切です。
イメージしているデザインに近いメディアがあれば、参考サイトとして情報を展開するとスムーズに進められます。
デザインの他にも、『更新しやすいか』『CTAの配置が柔軟か』など運用フェーズもイメージすることも重要になります。
多くの場合、CMS(コンテンツ管理システム)を用いて、Webの専門知識がなくても更新できるように設計するのが一般的ですが、社内にノウハウが無い場合は一通りの提案をしてくれる制作会社の選定が必要不可欠となります。
まとめ
『企業のブランディング強化』『自社サービスの認知向上』など、企業が抱えている課題を解決できる可能性をオウンドメディアは秘めています。
大切なことは、オウンドメディアを立ち上げる前に「達成したい目的」を明確に洗い出すことにあります。
目的を達成するためにオウンドメディアが必要であると判断した場合には、しっかりと戦略を練った上で進めましょう。