オウンドメディアリクルーティングとは?効果的な始め方をまとめ

オウンドメディアリクルーティングとは?効果的な始め方をまとめ

近年オウンドメディアリクルーティング(Owned Media Recruiting、OMR)による人材採用が積極的に活用され、採用活動に取り組む企業が増えています。

『オウンドメディアリクルーティング』とは、オウンドメディアで自社の魅力を発信を行いながら採用活動をすることを指します。採用目的のオウンドメディアを運営し、採用活動を行うことで求職者に、『自社の魅力』をコンテンツを通してアピールしたり、採用の『ミスマッチ』改善につなげられます。

本記事では『オウンドメディアリクルーティングとは』から始まり『運用を始めるための準備』『成功事例』を紹介します。
リクルーティング用のオウンドメディアを『これから運用を始める方』や『基本から学んでいきたい方』に向けた記事になっています。

企業の獲得の為のオウンドメディア運営とについてはこちらの記事をご覧ください。
オウンドメディアとは?基礎知識と失敗しない運用方法ポイントまとめ

オウンドメディアリクルーティングとは?

オウンドメディアリクルーティングとは

オウンドメディアリクルーティングとは『自社の運営するオウンドメディアで行う人材採用活動』を指します

従来の採用活動は、求人サイトなどに募集を掲載し求職者からの応募を待つという、受動的な掲載でした。

多くの求人サイトでは『掲載スペースを自由にカスタマイズできない』『自社の情報全てを網羅して掲載できない』など、情報量が制限され『企業が伝えたいすべての情報』を掲載できません。

求職者に対し『最大限に魅力を訴求できない』『他社との差別化が難しい』といった企業の課題を解決するメディアとして、オウンドメディアリクルーティングを運営することで、自社の魅力を最大限に発信ができます。

求人サイトとの違い

前述したとおり、採用活動で多く利用している『求人サイト』では、自社の魅力を伝えるためには限界があります。
求人サイトとの違いは『自社で採用メディアを保有する』という点です。

求人サイトは、サイトを運営している企業がメディアと求人情報を保有します。そのため掲載期間をはじめとした文字数/スペース/レイアウト/デザインなどに制約があります。
一方でオウンドメディアは自社が運営しているため『掲載期間』も『文字数』に制約がありません。

自社の特色や方針など会社としてアピールしたい内容を自由に掲載することができるため、自社の魅力を最大限に伝え『自社に合う人材』を応募につなげることが可能です。

オウンドメディアリクルーティングでは『自由な掲載』ができる求人サイトとの大きな違いです。

なぜオウンドメディアリクルーティングが注目されているのか

なぜ今オウンドメディアリクルーティングが注目を浴びているのでしょうか?

それは、人材不足が進行する中で『自社で長く活躍してくれる優秀な人材を採用したい』と考える企業が増えていることがあげられます。
オウンドメディアリクルーティングが注目されている理由を3つ紹介します。

1、採用コストの削減につながる

オウンドメディアリクルーティングは『採用コストの削減』に繋がります。

企業は人材を確保するため、説明会や求人サイト掲載などを行い採用活動をします。そのため企業は採用活動に多額なコストが発生します。

採用した方が長く企業で働いてもらえたら良いですが、多くの企業では離職も問題となっており、入社後の教育コスト・新たな採用活動コストなどの費用増加を生み出してしまいます。

オウンドメディアリクルーティングではメディアを運営する資金のみで採用ができ、自社独自のコンテンツ配信が可能です。
たとえば『社員の一日の流れ』や『採用後の働き方』といったコンテンツを配信することで、入社後のイメージを採用前に求職者へ見てもらうことができます。

応募時点で社内の働くイメージや職場環境を共感してもらうことで採用後の離職率の低下が期待できます。

自社で採用活動をおこなうことは、『社内の雰囲気/環境』を具体的に伝えるだけでなく、入社後の離職率の低下や今後発生する採用コストを抑えることに繋がることも、注目を集めている理由のひとつです。

2、求職者の価値観の多様化

オウンドメディアリクルーティングが注目を浴びている2つ目の理由は、労働に対する価値観の多様化です。

コロナ禍によるリモートワークや時短勤務などライフワークバランスを取り入れる企業が増え、働き方が変化し「自分らしい価値観」で仕事をしたいという需要が増えたことが背景です。

そのため企業は、待遇面や仕事内容だけではなく『自社の価値やビジョンに共感することができるのか』や『長く働きたいと思う職場環境なのか』といった求職者の価値観の変化に対応することが必要です。

求職者が『ここで働きたい』と思ってもらえるような自社の魅力を発信するためにオウンドメディアリクルーティングの活用が重要です。

仕事選びに関する情報収集が容易になった

スマートフォンの普及により、求職者はさまざま方法で求人情報を調べることが容易になっています。

求職者は、インターネット検索で『必要な情報』を簡単に調べることができるようになり
自分にとって『必要な情報』と『必要でない情報』を無意識に判断できるほど情報収集のリテラシーが高まっています。

求職者は、さまざまなキーワードで検索し「自分の価値観」に合った仕事を探します。

たとえば求人サイトで興味ある会社見て自分に合っている会社かを判断し、『自分に合った会社か?』を深く知るために、企業のホームページを見に行った後に応募するケースも一般的となってきています。

求職者は求人サイトのみで判断するのでは無く、自らインターネット検索を使い、より細かい検索キーワードで、働きたい企業を探すように変化しています。
そのため企業は、求職者が自社のウェブサイトに訪れた際に提供するコンテンツとして、オウンドメディアリクルーティングを活用する事が採用効果の向上に繋がるのです。

オウンドメディアリクルーティングのメリット・デメリット

オウンドメディアリクルーティングのメリット・デメリット

オウンドメディアリクルーティングは求職者に自社の魅力やアピールために有効な手段ですが、デメリットもあります。

メリット

オウンドメディアリクルーティングのメリットについて解説します。

求職者とのミスマッチを防ぐ

オウンドメディアリクルーティングでは、自社の『魅力』『理念』『方針』『特徴』などを幅広く配信することが可能です。

求人サイトとは違い『自社のオフィス環境』や『働いている社員の日常』など、掲載が限られている求人サイトでは掲載できない部分の発信ができます。
具体的な情報掲載によって、採用前と採用後のギャップをなくし、早期退職などの離職率の低下につなげる事ができます。

自社の認知度の向上

オウンドメディアで情報配信することでこれまで『情報の届かなかったされなかった求職者』にアピールしやすくなります。

公開したコンテンツを TwitterやInstagramなどのSNS媒体で発信すれば、シェアやリツィートにつながり、拡散されることで、企業が発信した情報を見ている以外の層の求職者にアピールする事が可能です。
SNS上での拡散によって会社の存在を知ってもらい認知度を高める効果があります。

SNSで発信された情報は、(検索エンジン)検索ユーザー以外へアプローチする事ができるのでオウンドメディアはSNSをうまく組み合わせることで、認知度の向上につなげられる施策です。

自社の魅力を伝えられる

オウンドメディアを使ったリクルーティングは『求職者に届けたい情報を自由に発信できる』ことがメリットです。

求人サイトでは掲載できる情報量に限りがある為、企業側が魅力的だと思う情報のすべてを伝えられるわけではありません。また、フォーマットが決まっているため他社との差別化を出しにくいでしょう。
たとえば『社長の日常風景』や『実際に働いている社員の紹介動画』『社内アンケート』などを発信する事で、求人サイトでは伝えられない情報を求職者に伝えることができます。

社内のメンバーが当たり前と思っている事も外部からは見えにくく、そういった情報を発信する事で親しみを持ってもらう事にも繋がります。

採用力の向上

オウンドメディアリクルーティングは、求人広告とは異なり継続的に配信をする情報(コンテンツ)はストックされ続け、企業の資産となっていきます。

年間2,3名の人員増加を行う程度であれば、必要なタイミングで求人広告を掲載する方が即効性があります。
しかし、毎年毎年、数十人の採用をする企業の場合、それらのすべてを求人媒体に頼ってしまうと採用人数に比例して求人費用が膨らんでいってしまいます(採用人数×求人費用)。

オウンドメディアリクルーティングを行う事で、発信する情報は資産となり、運営が軌道に乗れば自社メディアだけで採用ができるようになってきます。
求人広告はオウンドメディアでの採用数を補填する形で出稿していけば、求人広告費を削減しながら、資産を増やしていく事が可能となります。

潜在層へのアプローチ

オウンドメディアリクルーティングは、インターネット検索で『自社を見つけてくれた』求職者をターゲットにできるため、転職意欲が高くない潜在層にもアピールが可能です。

求人サイトに登録している求職者は『今すぐに転職』を考えている顕在層が多く、自社の魅力が伝わらなければ応募につながりません。

たとえばインターネット検索で『自社を見つけてくれた』求職者(この時点では潜在層)が、本気で転職を考え始めた時(顕在化した状態)「興味のある会社があったよな?」と思い出し、応募につながることがあります。
また、この流れをリターゲティング広告を使う事で、企業から積極的にアプローチする事が可能です。

リテ−げティング広告とは
オウンドメディアを閲覧した情報をトラッキングし、閲覧日から3ヶ月後にバナー広告を配信していく等が可能。

長いスパンで行う採用活動では、オウンドメディアを充実させ、求職者に自社を見つけてもらいやすくすることが重要です。
顕在層だけではなく潜在層にもアプローチすることで、これから転職の可能性のあるユーザーに認知してもらう事ができます。

デメリット

即効性がなく中長期的な時間が必要

オウンドメディアで採用活動を始めても、残念ながらすぐに応募には結びつかないと思っておく必要があります。
自社の求人サイトをきっかけにオウンドメディアへの流入が増えはじめ、コンテンツの増加と共に自然検索からの流入が徐々に伸びていくのがオウンドメディアの傾向です。

そのため短期的な効果は期待できず、中長期的な計画を持って運用することが必要です。配信するコンテンツの質よっては応募につながらないことも認識しておかなくてはなりません。

初期コストが必要

オウンドメディアの運営をはじめるにあたり、初期コストが必要になります。多くの場合、顧客向けサイトとリクルーティングサイトは別々に運営した方がそれぞれのメリットを出しやすいためです。

デザインや投稿/更新のしやすさはもちろんですが、運営を開始してどの様にSNSと連動させていくのか。動画の撮影は行う予定があるのかを検討し、シナジーが生みやすいシステムを組み込んでいく必要があります。

制作費用の目安としては80万円〜200万円程度が相場となります。

オウンドメディア運用のノウハウが必要

オウンドメディアを運用して成果を上げるためには『ノウハウ』を身につけることが必要です。

オウンドメディア運営は、コンテンツ作成や配信を継続的に行うだけではありません。
配信されたコンテンツがユーザーに『どのくらい見られているか』『コンテンツから応募につながっているか』などの効果測定を定期的に行う事が重要です。
例えば、記事を見た求職者は応募ページまで流入しているのか。どの程度熟読してくれているのか、またその数値はどの様に変動しているかを確認します。

また、『採用マーケティング』という言葉があるように、『顧客獲得の為のマーケティング活動』と同じレベルで行っていく事で、採用後のミスマッチを減らすためのコンテンツ設計なども可能となります。
『顧客獲得の為のマーケティング活動』ではマーケティングツールをサイトに導入することで、お問い合わせに繋がった見込み客が、どこから来てどのページを見てから問い合わせを行ったのかを把握する事が出来ます。

さらに、その後の商談結果をツールに記録しておけば、受注率の高い(サイトへの)流入経路や、コンテンツを特定する事ができるでしょう。そして、これをオウンドメディアリクルーティングに応用すれば、採用後3年以上在籍した社員が必ず見ているコンテンツを分析する事も可能となります。

上記のような事が分析で判明すれば、質の高い(応募に貢献しているだけではない)コンテンツへ誘導する為のバナーを作ったり、似たようなコンテンツを増やしていく事で、応募から先もコントロールできるメディアと成長させる事も可能です。

オウンドメディアリクルーティングの始め方

オウンドメディアリクルーティングの始め方

 

オウンドメディアリクルーティングを始めるにあたって必要な準備について解説します。

採用ターゲットを決定する

採用ターゲットとは『入社して欲しい人物像』を指します。

たとえば仕事に必要な資格やスキル/何年以上の勤務実績や経験があるかなどの定量的な採用基準はもちろん、価値観ややる気などの定性的な基準も明確にしましょう。
採用ターゲットが定まってないと、オウンドメディアの運営を開始後のコンテンツにバラツキが生じてしまい、『ブレた』メディアとなってしまいます。

自社の特徴/強みを整理する

自社の特徴や強みを整理する際は、社員だけでなく社外からの客観的な意見も参考にします。
また、直近で入社したメンバーに

  • 自社以外に受けた企業
  • 最終的に入社した決め手
  • これから、何を目指しているか

といったヒアリングを行えれば、現在求人媒体で打ち出している強みと、求職者が感じた強みのギャップを把握する事もできます。

採用メディアの作成

リクルート用のオウンドメディアがない場合は、採用サイトの制作が必要です。

サイト制作の経験があればサイト自体を作ることは難しくないでしょう。ですが内容をどのようにして行けばいいのかなど専門的なノウハウは必要です。

サイトの制作経験やノウハウがない方は外注で採用サイトを制作がおすすめです。Web制作会社であれば、オウンドメディアリクルーティングに対応したサイトの実績経験や専門的な提案をしてくれます。

ターゲットと自社の強みが固まっていれば、制作会社とのコミュニケーションもスムーズにすすめる事ができます。

長期的な運用体制を整える

オウンドメディアリクルーティングは、中長期的に運用することで効果が高まる施策の為、サイトの公開がプロジェクトのスタートと言ってもよいでしょう。

  • 月間で何本のコンテンツをどの様に用意するのか
  • コンテンツ作成は誰が行うのか
  • 短期的なKPIの策定
  • 長期的なKPIの策定
  • プロジェクトの責任者とメンバーの決定

など、この段階で決まっていないものはすべて明確に決めておく必要があります。

特にKPIの策定は、経営陣としっかりとすり合わせを行った上でスタートしておかないと、のちのち『効果/結果』の定義がずれてしまい、足並みが揃わなくなります。

コンテンツの参考例

コンテンツの参考例

オウンドメディアリクルーティングではどのような一般的に、どのようなコンテンツが配信されているか、オウンドメディアで採用活動している企業が配信しているコンテンツを参考にしてみましょう。

インタビュー記事

まず最も多くのオウンドメディアで取り入れられているのが『インタビュー記事』です。

実際に在籍している社員の顔や考えがわかるため、入社後にどのような仲間と働くことになるのか、求職者がイメージしやすくなります。

先輩社員のインタビューでは『入社を決めたきっかけ』や『仕事のやりがい』『将来どんな人材になりたいか』といった点をコンテンツにすることで、企業の価値観やどのような人材が活躍しているかを求職者に伝えることができます。

またインタビュー記事を充実させるために『1日の仕事の流れ』なども掲載すると入社後の働く環境を具体的にイメージさせることができます。

プロダクトやサービスへの想いを紹介する記事

企業の価値観を伝えるコンテンツとして、プロダクトやサービスにこめられた想いを紹介することもひとつの手段です。

開発に関わった社員が『サービスの開発経緯』『サービスの背景』『開発秘話』などを語ることで、社会に対してどのように価値を提供し、貢献していきたいかを伝えられます。

経営者の想い・価値観を伝える記事

経営者が『創業の想い』や『これまでの困難』を伝えるコンテンツは、同じような価値観をもった求職者に刺さる効果的なコンテンツです。
経営者が自ら『創立した経緯』や『どのような想いで会社を経営しているのか』などインタビューすることで求職者をひきつけることができます。

メッセージ性のある『会社の理念』や『求める人材』を伝えられます。

社内の研修風景、勉強会の紹介記事

採用サイトで働き方に関することや社内制度、福利厚生などを掲載するのも大切です。

たとえば子育てをしながら働くための休暇や手当などの制度を、実際利用したことのある社員にインタビューし掲載することで、求人媒体で書かれる福利厚生よりリアルな状況をイメージしてもらいやすくなります。

また新卒採用であれば、入社後に『どのような研修をするか』『教育制度は充実しているか』などに学生は興味を持つ為、日頃行われている勉強会や昨年の新卒研修の風景などをコンテンツにするのもおすすめです。

自社のフォトギャラリー

求職者により深く理解してもらうために写真や動画の活用が効果的です。
働いている社員の姿や表情/職場の雰囲気が写真から伝えられるため、求職者は『自社で働くイメージ』を、より持ちやすくなります。

求職者は企業の『リアルな職場環境』を応募時の判断材料の一つにします。
職場環境を写真や動画で伝えることで、応募につながりやすくなります。

また社員のプライベート写真も載せることで、求職者に『一緒に働く社員』の雰囲気や人柄を伝えることが可能です。

まとめ

本記事ではオウンドメディアリクルーティングのメリット・デメリット・進め方について記載しました。

求職者の求める価値観や企業に求める部分などは時代と共に変化しています。
求職者が企業に求めることが変化したことでオウンドメディアリクルーティングは企業が求める人材の確保に有効です。

企業側が思っているほど、

求職者には必要な情報は届いておらず、また情報が少ない

と考えれば、コンテンツの幅も広がりより深いコンテンツを作る事ができるでしょう。